
実写版【美女と野獣】は、ディズニーだけではなく、フランスでも作られていたことをご存知でしょうか。
フレンチアンティークの輝きがそこかしこに散りばめられ、ギリシャ神話とからめられた美しい映像は、大きな賞賛を集めました。
しかもディズニーが描かなかった、王子の凶暴な心の闇の部分が描かれているのです。
王子が野獣に姿を変えられたのは、老婆をぞんざいにあしらったことが理由ではなかったのです。
ここではキャストやあらすじ、見どころをまとめています。
フランス版【美女と野獣】について・キャスト
2014年にフランス・ドイツが協力して作成したファンタジー映画です。
第27回ヨーロッパ映画賞の観客選考最優秀映画賞にノミネートされ、第64回ベルリン国際映画祭ではコンペティション外上映されるほどの賞賛を得たのです。
また、原作の小説が出版された時代…つまり、18世紀の古きフランスのアンティークを散りばめ、美しいドレスやティアラなどをいくつも用意し、観客の目を楽しませてくれました。
そのため、栄えある第40回セザール賞で3部門にノミネートされ、プロダクション・デザイナー賞も授けられたのです。
- ベル:レア・セドゥ
- 王子・野獣:ヴァンサン・カッセル
- プリンセス:イボンヌ・カッターフェルト
- ベルの父親:アンドレ・デュソリエ
- ベルの姉アンヌ:オードレイ・ラミー
- ベルの姉クロチルド:サラ・ジロドー
- ベルの兄(長男)マキシム:ニコラ・ゴブ
- ベルの兄(次男)ジャン=バチスト:ジョナサン・ドマルジェ
- ベルの兄(三男)トリスタン: ルーカ・メリアーヴァ
- ならず者のペルデュカス:エドゥアルド・ノリエガ
- ペルデュカスの恋人(占い師)アストリッド:ミリアム・シャルラン
ヒロインであるベルを演じるレア・セドゥは、「ミッドナイト・イン・パリ」や「007スペクター」でボンドガールを務めたフランスの女優です。
青い瞳の印象的な彼女は、2013年主演の「アデル、ブルーは熱い色」で第66回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール賞を授かっています。
彼女の魅力は、透けるような肌がひときわ輝く神秘的な美しさ、そして儚げな中に芯の強さが垣間見える演技です。
一方、王子役のヴァンサン・カッセルも青い瞳をもつ、フランスの俳優。
「ブラック・スワン」でセクシーな演出家を演じたことでも有名ですね。
また、過去にはモニカ・ベルッチの夫でもありました。
二人が原作の精神を保ちながらも、新しい世界を演じたこの作品。
さぁ、あらすじを解説していきましょう。
映画のあらすじ(動画・ネタバレあり)
ベルは、裕福な商人の家庭に生まれ、兄姉の5番目の末っ子として大切に育てられました。
しかし、父のもとへ商品を運んでいた船が嵐で難破したとの知らせが来ます。
破産した一家は、人に隠れるようにして田舎で暮らすことになりました。
そんなある日、父親が森で道に迷い、バラの咲き乱れる古城に辿り着きました。
寒さと飢えをしのぎたい彼が城の中で見たものは、美味しい食べ物や娘たちがお土産に欲しがったドレスや調度品の品々でした。
父親はそれらを馬の背に乗せ、最後にベルが唯一ねだった一本のバラの花をお土産に…と、バラを手折った瞬間、野獣に襲われてしまったのです。
父親は、最後に一目家族に会いたいと懇願し、野獣に1日だけ猶予をもらい帰宅しました。
しかしベルは父をかばい、自分が野獣の元へと向かいます。
そこで待っていたのは、毛むくじゃらで恐ろしい野獣の姿と、部屋に準備されたまばゆいばかりのドレスやアクセサリーでした。
そして野獣はベルに、夕食を毎日共にすることを要求します。
しかも、野獣は夕食を共にするようベルに要求したくせに、「食事する姿は人には見せない」と言うのです。
荒々しくぶっきらぼうな野獣とベルは衝突してばかり。
しかしベルは夜寝ている間、不思議な声に呼ばれ、記憶の泉に映したこの城の過去の物語を見せられます。
そこで、野獣が王子だった頃の姿、そしてそのお妃だったプリンセスの愛の軌跡を知らされます。
プライドが高く傲慢な王子は、プリンセスを城に残し、何日も男たちと狩りに出かけるのが常でした。
彼が夢中で1年以上も探しているという獲物は、黄金の毛並みを持つ美しい女鹿。
プリンセスは悲しそうに、「もうあの鹿のことは忘れて」と王子に頼みます。
しかし王子は、一度見て忘れられない美しい女鹿を何としても自分のものにしたかったのです。
ある日、やっとのことで王子は女鹿を追いつめ、その胸に矢を射て近付きました。
すると何ということでしょう、その女鹿は急に人間の女の姿になり、しかもそれはプリンセスだったのです!
胸から流血し、苦しそうに息を吸うプリンセスを抱きかかえる王子。
プリンセスは「私は森の妖精。あなたに恋をして、人間に姿を変えて現れたのよ」と言いました。
そして「お父様、偉大なる神よ。どうか王子を赦してあげて…!!」と懇願し、息絶えます。
自身の愚かさを悔やんでも悔やみきず、泣き叫ぶ王子。
娘を奪われた神は怒り、空は見る見るうちに黒い雲に覆われ、プリンセスの流した血からはバラの蔓が生え茂り、あっという間に城を覆いました。
そして気が付くと、王子は獣の姿に変えられていたのです。
神は言いました。
「おまえを人間が心の底から愛してくれたら、人間に戻れる」
野獣はプリンセスの倒れた場所に彼女そっくりの石像を横たえ、墓としました。
石像の胸には、プリンセスの胸を撃ち抜いた金の矢が立てられています。
この時やっと、ベルは庭で見つけた墓の意味を知るのです。
野獣は徐々にベルに惹かれていき、自分を愛してくれるよう頼みました。
ベルも、彼の素顔を知っていくにつれ、心がほどけていくのを感じていました。
しかし、荒々しく傲慢さの残る野獣を、ベルはすんなり受け入れられません。
ある夜、ベルは野獣の決定的瞬間として、おぞましい光景を目にしてしまったのです。
ベルの前で食事をとらない野獣は、夜な夜な森で狩りをし、自分の部屋で殺したばかりの獲物に食いついていたのです…!!
肉を食いちぎり、骨を噛み砕く音、そいて血の飛び散る様子…何と恐ろしい光景でしょう。
心を寄せ始めていたはずの目の前の彼は、人間なのか獣なのかわからない…!
そして野獣自身も、自分が本当に野獣になってしまったのではないかと苦悩していたのでした。
ベルは必死で城を飛び出し、氷の張った湖の上を走って逃げました。
しかし野獣がものすごいスピードで追いつき、ベルを組敷きます。
「私は愛する人を殺してしまった。お前まで失いたくない…」
その瞬間、野獣の体重がかかった氷が割れ、ベルは冷たい湖へと沈みました。
そして気が付くと、そこは野獣に与えられた自分の部屋。
側には優しい目をした野獣がいました。
野獣がベルを助け、介抱してくれたのです。
徐々に野獣に気持ちが移っていくベル。
そして、家族に一目会いたいと願うベルの望みを野獣は受け入れ、ベルに魔法の薬を渡します。
「何か危険があったら、これを飲みなさい。
必ず戻ってきてくれ。でないと、私は死ぬ…。」
「必ず戻るわ!」と約束して大急ぎで山を駆け抜けるベル。
ずっとベルの心残りだった父親は、既に何日も目を覚まさない程、重篤な容態でした。
しかしベルが野獣からもらった薬で、父は元気に回復したのです。
大喜びする父と姉たち。
しかし長男マキシムは、美しい身なりで戻って来たベルを見て、城の財宝を奪えば自分の借金を返せるともくろみます。
マキシムはならず者ペルデュカスから金を借りており、脅されていたのです。
マキシムはベルの馬を奪い、ペルデュカス達と共に古城へ向かいます。
ベルは走って野獣の元へ帰ろうと急ぎます。
その頃、ペルデュカス達は野獣のしかける魔法動物に追われ、もう助からないと思ったその時。
ペルデュカスはプリンセスの墓から奪った黄金の矢で、野獣の胸を一突きしたのです。
崩れ落ちる野獣と、そこへやっと駆けつけたベル。
魔法が解けて人間の姿になった王子を抱きしめて、愛の言葉を囁きます。
すると王子は見事に人間として生き返り、ベルと結婚します 。
二人は父と子供二人と一緒に、花を育てて花屋として働きながら、幸せに暮らしました。
おしまい。
見どころ
この作品の雰囲気は、さすがのフランス作品!の一言に尽きます。
何せ、16世紀の実話からずっと語り継がれてきたフランスの物語ですから、思い入れと誇りを持っているのです。
フランス映画の独特な美意識を満喫できることでしょう。
そしてまた、原作にあるものの他の作品で描かれなかった、王子が獣に変えられてしまった経緯や、兄姉の性格までが描かれていることも注目したいところ。
人間の持つ欲望や弱さ、強さが丁寧に描かれています。
時代を超えて誰もが持つ人間くささに、きっとあなたも考えさせられることでしょう。
また、ベルが毎日着替える美しいドレスや装飾品はとても素敵です。
ディズニー実写版の【美女と野獣】でエマ・ワトソンが着ていたドレスがとてもシンプルに見えてしまうほど。
贅沢な生地をふんだんに用いた華やかなドレスを、レア・セドゥが見事に着こなしています。
- ベルのドレスと装飾品
- 作品中の美術・調度品
- 原作と同じくギリシャ神話の流れを汲む、ファンタジー映像
- 野獣が本当に獣になってしまうのではないかという、王子の苦悩
- 王子の傲慢さと弱さの対比
- ベルの野獣への想いの移り変わり
- 美しいフランス語
見どころいっぱいのフランス版【美女と野獣】も、必見です!
ぜひご覧になり、フランスの美のエッセンスを感じてみてくださいね。