
もうすぐクリスマス!
クリスマスの映画で世界的に有名なのは「クリスマス・キャロル(A Christmas Carol)」ではないでしょうか。
原作はイギリスの文豪「チャールズ・ディケンズ」の小説です。
この小説に基づいてアニメーション映画にしたのが「ディズニーのクリスマス・キャロル(Desney’s A Christmas Carol)」なのです。
さすがはディズニー、設定は少し変更されているものの、台詞まで忠実に原作を再現しています。
そして映画の意図がとても鮮烈に胸に残るのです。
この素晴らしい感動の映画のあらすじを、名台詞の英語と和訳付きで解説していきましょう。
ディケンズとクリスマスキャロル
まずは原作からご説明します。
作者の生い立ちが作品に大きく影響していることがわかり、より深く感じ入ることでしょう。
1843年12月19日、イギリスの文豪「チャールズ・ディケンズ」が、31歳の若さで出版した小説「A Christmas Carol」。
これによって彼は世界的に有名な作家となりました。
1992年から2003年まで用いられた10ポンド紙幣には、彼の肖像画が描かれているほど。
少年時代のディケンズは病弱であり、両親は金銭感覚に乏しかったため、家計は貧しかったといいます。
孤独な病床で様々な本を濫読した子供でした。
12歳の時に家計は破城し、借金を払えなくなった父親は監獄へ。
ディケンズは幼いながら、親戚の経営する靴墨工場へ奉公に出されますが、そこで壮絶な仕打ちを受けるのです。
そんな困苦の時代は彼の感受性に深く爪痕を残し、それがその後の彼の作品に強く影響しているのでした。
15歳から法律事務所で速記術を学びながら事務員として勤め、20歳前後にはジャーナリストとして活動するようになりました。
そして21歳でエッセイが雑誌に掲載され、作家の道を歩むことになったのです。
彼の作品には、主に下層階級の主人公が弱者の視点で社会を描く、共感深いものが多くあります。
以下が代表的な作品です。
- オリバー・ツイスト
- デイヴィッド・コパフィールド
- 荒涼館
- 大いなる遺産
これをディズニーが美しいアニメーションで再現したのが、世界中で大変な人気となりました。
スクルージの凍った心が徐々に溶けてゆき、人生の意味や本当に大切なものが何かを情感豊かに訴えかけてきます。
さすが、世界のディズニーです!
お子様とも安心して観れることでしょう。
逆に、不朽のディズニーアニメーション「美女と野獣」が、実写版として蘇ります。
実はこの「美女と野獣のプリンス」のラブストーリーは、16世紀のフランス王朝であった実話だったと、ご存知でしたか…?
ディズニーのクリスマスキャロルのあらすじ
-
【登場人物】
- エベニーザ・スクルージ (Ebenezer Scrooge):主人公。冷徹な守銭奴で、皆から避けられている。
- フレッド (Fred):スクルージの可愛がった妹(ファン)の遺した子。親戚でたった一人、スクルージに手を差し伸べる甥。
- ボブ・クラチット (Bob Cratchit):スクルージの元で低賃金で雇われている、善良な男性
- ティム・クラチット(タイニイ・ティム)(Tim Cratchit; Tiny Tim):ボブの末っ子。足が不自由で病弱でも、優しく賢い男の子。
- ベル (Belle):スクルージの元婚約者。親を亡くした貧しい女性。
- マーレー(Marley):スクルージと共に会計事務所を設立したが、7年前のクリスマスイブに亡くなった
- 過去のクリスマスの精霊
- 現在のクリスマスの精霊
- 未来のクリスマスの精霊
ロンドンで会計事務所を構える、冷酷なエベニーザ・スクルージ。
寄付を募りに来た紳士に、「貧乏人は死ねば良いんだ」と言い放ち、軽蔑の眼差しで見られても平気です。
心優しいボブを安月給でこきつかい、年に一日のクリスマス休暇にも文句を言うのです。
そんなクリスマスイブの晩、彼の元に7年前に亡くなった同僚マーレーの亡霊が現われます。
彼は生前の強欲の罪で鎖につながれ、死んでもなお永遠の苦しみの中を彷徨っているというのです。
マーレーは、自分と同様に生き方るスクルージに生き方を改めるよう忠告し、そのチャンスとしてこれから3人のクリスマスの精霊が来ることを告げます。
第一番目の精霊は「過去のクリスマスの精霊」。
彼はスクルージの子供時代へと連れて行きます。
学校でいじめられ、仲間外れにされていた可哀そうな子供時代。
横暴な父のせいで、家族と離れ離れで暮らした、孤独な青年時代。
けれどもその中で、可愛い妹ファンだけは自分を助けようとしてくれたことを見せられます。
ファンのお蔭で家族とクリスマスを過ごすことができた、幸せな時間を持てたのです。
キリスト教のイギリスにおいて、クリスマスを家族と過ごせるのはどれほど大切なことだったでしょうか。
可愛がっていたファンは若くして他界しましたが、彼女が唯一遺したのが、甥のフレッドなのです。
そして働くようになって出会った美しい女性ベルと婚約し、幸せなスクルージがいました。
しかし幼少時代の貧しさへの恐怖から、次第にお金の亡者となっていったスクルージは、ついにベルから別れを告げられます。
そして第二番目の「現在のクリスマスの精霊」がやってきます。
彼によって、スクルージはボブ一家が貧しいながら家族で集い、クリスマスを精一杯の手料理で祝っているのを目にします。
そして末の息子ティム坊やが、足が不自由で病気と闘いながら、美しい慈愛の心で健気に生きていることを、初めて知るのです。
そしてまた、亡き妹ファンの遺した甥のフレッドが、スクルージがクリスマスパーティに来ず、頑なに心を閉ざしたままであることを悲しみながら、スクルージのために皆と乾杯をしてくれているのを見せられます。
そんな愛に打たれ、悔い改めようと思ったスクルージの前に、第三番目の「未来のクリスマスの精霊」が現われます。
彼が見せたものは、全ての人から嫌われ、孤独に一人で死んでいった一人の男の姿でした。
悲しむものは誰もおらず、家の中のものや、亡きがらに着せられていた仕立ての良い服すらも剥ぎ取られ、荒れ果てた墓に侘しく葬られるのでした。
そしてその墓に刻まれた名を目にし、その孤独で忌み嫌われた男が未来の自分だと知るのです。
スクルージは必死で精霊に懇願します。
今までの罪を悔い改め、良い人間に生まれ変われば、未来は変えられるのかと。
過去に犯した全ての罪を忘れず、学びに変え、これから良い人間として生きるので、どうか助けてさいと。
叫びも虚しく、墓地の深い深い穴に埋められた棺の中へ真っ逆さまに落ちていくスクルージ…!
…しかし目覚めると、晴れ渡ったクリスマスの朝だったのです。
スクルージはただ生きていることがこんなにも幸せで、そしてこれから人々の役に立てることが嬉しくてたまりませんでした。
まず、大きな七面鳥を匿名でボブの家に届け、そして甥のフレッドのパーティへと赴きます。
フレッドを始め親戚たちと仲直りをし、美味しい夕食を囲むのです。
マーレイや三人の精霊たちに学んだスクルージは、生まれ変わったように人々に優しくなりました。
町の人々から愛され、ロンドンで一番クリスマスの楽しみ方を知っている人として、語り継がれることになったのです。
映画のストーリーを英語と和訳で解説
それでは、映画の中での心に響くシーンを英語と共に解説していきます。
原文の方がテンポ良く機知に富んでおり、より味わい深いことでしょう。
クリスマスイブの日、甥のフレッドがスクルージを自宅のパーティに招いた時。スクルージはぶっきらぼうに断わり、皮肉に言うのです。
《フ》What right have you to be so dismal? You’re rich enough.(なぜ不機嫌なんです?そんなに金持ちなのに。)
貧しい人への寄付を集めに来た紳士に冷酷に言い放った、スクルージの言葉。
これは後に、現在のクリスマスの精霊によってスクルージに返ってくるのです。
クリスマスイブの晩、スクルージの前に現われたマーレーの霊が鎖につながれている。スクルージがその理由を問います。
《マ》I wear the chain I forged in life. I made it link by link and yard by yard.(生きている時に自分で作った鎖さ。鎖の輪を一つずつ我が手で作ったのだ。)
Can you imaginethe weight and length of the chain you bear?(お前がまとっている鎖の重みと長さがわかるか?)
マーレーの霊がスクルージに言った、自分の人生を悔いる言葉。
Mankind…was my business.The common welfare was my business.(人のために…働くべきだった。恵まれない人々のために尽くすべきだった。)
Charity,mercy,forbearance,and benevolence were all my business.(奉仕、慈悲、忍耐と博愛、それが私のするべき仕事だったのだ。)
過去のクリスマスの精が、スクルージの子供時代に住んでいた町に連れて行った時。
感動したスクルージの中に、眠っていた人間らしさが目覚めていきます。
《精》Your lip…is trembling. And what’s that? On your cheek?(唇が…震えている。それは何だ?頬の上のものは?)
《ス》Nothing. Something in my eye.(何でもない。目に何か入ったんだ。)
《精》Do you remember the way?(道を覚えているか?)
《ス》Remember it? I could walk it blindfolded.(道を覚えているかだと?目隠しをしたって歩けるくらいだ。)
今は亡き妹ファンが、スクルージを迎えに来たと駆け寄ります。
スクルージにも、クリスマスを祝った時があったのです。
気難しい父親に怯え、家族が一緒に住めなかった孤独な時代が描かれていますが、ここには作者ディケンズの少年期の体験が表われているのでしょう。
《ス》Home,little Fan?(家へ帰れるのか、可愛いファン?)
《フ》Yes,home!Father is so much kinder than he used to be.(ええ、家へよ!お父さんが前よりずっと優しくなったの。)
He spoke so gently to me one night. I was not afraid to ask him if you might come home. And he said yes!(この前の夜、すごく私に優しかったから、私はお兄ちゃんが家に帰っても良いかって、怖がらずに聞いてみたの。そうしたら、良いって!)
And he sent me in a coach to fetch you.(それでお父さんはお兄ちゃんを迎えに行くために馬車をよこしてくれたの。)
And we’re to be together all the Christmas long.(私たちはクリスマスの間中、一緒にいられるわ!)
And to have the merriest time in all the world!(世界中で一番幸せな時間を過ごすのよ!)
婚約者ベルから別れを告げられるシーン。
賢いベルの指摘が図星だったからこそ、何も言い返せなかった過去の自分を見せられ、やりきれなさと後悔に押しつぶされそうになるのでした。
Tell me,Ebenezer,if this contract had never been between us,would you seek me out now?(教えてエべニーザ、もし婚約をしていなかったら、今のあなたは私と結婚する?)
《ス》You think not?(しないと思うのか?)
《べ》I would gladly think otherwise if I could.(できることならそんな風に考えたくないわ。)
But if you were free today,would you choose a dowerless girl?(でももしあなたが自由だったら、持参金なしの娘を選ぶかしら?)
A girl left penniless by the death of her parents?(親を亡くして一文無しになった娘を。)
You,who weighs everything by gain?(何でも利得で考えるあなたが。)
I release you,Ebenezer. May you be happy in the life you’ve chosen.(あなたを自由にしてあげる、エベニーザ。あなたの選んだ人生が、幸せでありますように。)
ボブが妻に話す会話から、末の息子ティムの純粋で崇高な精神が伝わるシーン。
足に障害を抱えながらも健気に生きるティム坊やに、ディケンズの少年時代が重なります。
And it might make pleasant for them to remember it upon Christmas Day who made lame beggars walk and blind men see.(そうしたら皆が「裸足の乞食が歩き、盲目の人が見えるようになった」という聖書の一説をクリスマスの日に思い出し、良い想いを持てるだろうって。)
I believe he grows more hearth and stronger every day,my dear.(あの子はどんどん元気になっている、そして日ごとに、強くなってきているよ。)
ティム坊やの心に打たれたスクルージは、ボブ一家に何の慈悲も持たなかったことを後悔し始めます。
それをより強く思わせるのが、ボブの上の子供たちがクリスマスのご馳走にガチョウを運び込み、喜び合うこのシーンです。
《妻》It’s a beautiful bird,that’s sor sure. But I’ll pray that one Christmas,perhaps,the children might taste a turkey.(本当に見事なガチョウだわ。だけどいつかは、クリスマスに子供たちに七面鳥を食べさせてあげたいわね。)
《ボ》Perhaps one day,my dear…Perhaps one day.(そうだな、いつかきっと…。いつか食べさせてやろう。)
A toast. To Mr.Scrooge. The founder of our feast.(乾杯しよう。スクルージさんに。このご馳走に感謝して。)
そしてパーティを断った甥フレッドの自宅で、自分のために乾杯をしてくれる人々を目の当たりにし、クリスマスの精神(博愛・慈悲)を思い知らされるスクルージなのでした。
He wouldn’t take it from me,but he may have it nevertheless.(おじさんは受け入れてくれないかもしれないだろうけど、それでもいつかこの杯を受けてくれますように。)
A merry Christmas to the old man,whatever he is. Uncle Scrooge.(どんな人であっても、良いクリスマスを。スクルージおじさんに。)
善良な人々の愛で、これまでの生き方を悔い改めたスクルージ。
未来を変えられるのか、未来のクリスマスの精霊に許しを乞います。
But if these course are departed from,these ends will change.Isn’t that so?(だが生き方を変えれば最後が変わるんだな。そうだろう?)
Spirit,I will honor Christmas in my heart and try to keep it all the year.(聖霊よ、わしはクリスマスの精神を真摯に心に受け入れ、毎年大切にします。)
I will not shut out the lessons of the past,nor present,nor future.(過去と現在と未来の教えを決して忘れはしません。)
人生を改めると誓ったスクルージがクリスマスの朝を迎え、生きていることへの感謝と喜びに溢れるシーン。
心持ち一つでこんなにも全てが美しく優しく映り、軽やかな幸せな気持ちになれることを知ります。
Live it up,folks! You’ll be a long time dead! (みんな、思い切り楽しんで生きるんだ!死ぬまでまだまだ時間があるぞ!)
Don’t let the worms have all the fun!(ウジ虫ばかりを楽しませるなよ!)
人生の素晴らしさを喜ぶスクルージは、以前寄付を断った紳士に、自ら多額の寄付を申し出たのです。
寄付することによって、自分を世の中のために生かしていただける事に深く感謝するスクルージの姿は、深い喜びそのものです。
Do not say anything. I’m much obliged to you.(何も言わないでください。お礼を言うのはこちらの方です。)
Many thanks to you. And bless you.(本当に感謝しています。神のご加護を。)
そしてスクルージは甥フレッドのクリスマスパーティへ出向き、驚き喜んで迎えてくれた皆にこう言うのです。
I’ll spare no expense. After all,you can’t take it with you,can you?(盛大にやりますぞ。金は墓場まで持って行けない。そうじゃろう?)
そしてクリスマスの翌日に出社したボブに、こう言いました。
I’ll raise your salary,and do whatever I can help your struggling family.(わしは君の給料を上げ、苦労している君の家族を助けるためにできる限りのことをしよう。)
そして最後のナレーション。
He did all that he said he would and more.(彼は約束以上の全てのことをしたのです。)
Tiny Tim,who got well,Scroohe was like a secondd father.(スクルージは、元気になったティム坊やにとって、もう一人の父親のようになりました。
He became as good a man as the good old city ever new.(この古い街で、彼はかつて見たこともないほど良い人間になりました。)
And it was always said of him that he knew how to keep Christmas well.(クリスマスの祝い方をとても良く知っている人だと、人々に言われるようになりました。)
And so,as Tiny Tim observed…God bless us,everyone!(そう、ティム坊やの言葉のように…神のお恵みを、全ての人に!)
いかがでしたでしょうか。
クリスマスの精神の素晴らしさと、人生の一番大切なものを改めて考えさせられる映画でしたね。
クリスマスを祝う人々の心に触れ、私たちもその素晴らしさを尊重する大切さを学ばされたような気がします。
世界中の全ての人が、幸せであるよう…願わずにはいられない、感動の映画でした。