
毎年10月にドイツと日本で開催されるドイツビールのお祭り、オクトーバーフェスト。
ドイツビールの芳醇なホップの香りやコクは、日本でも大変人気がありますね。
ドイツでは500年前にバイエルン公国で定められた「ビール純粋令」という、ビールの原料は「麦芽、ホップ、水、酵母」のたった4つだけ!という決まりがあるのです。
そのおかげでドイツのビールの品質は高く保たれ、全国に1300軒以上のビール醸造所があり、5000種類を超える地ビールが作られているのです。
その土地の水の硬度や麦の種類、ホップの品質、発酵方法の違いなどから、5000種類の味わいが生まれるなんて、素晴らしい叡智ですよね!
そして面白いのは、ビールのおいしさを最大限引き出す、ぴったりなジョッキがちゃんと考えられていることです。
まずはドイツビールの種類の大別と、各種ビールにぴったりのビールジョッキ、そして絶対に押さえておきたい有名なビールメーカーをご紹介していきます。
発酵方法は2種類!
ドイツビールは発酵のさせ方により、大きく分けて2つに分かれます。
下面発酵ビール
5℃くらいの低温で発酵させるビール。
最終段階で酵母が下に沈んでいくのが特徴です。
「ラガービール」とは、下面発酵ビールのことです。
例:ピルスナー、へレス、シュヴァルツ、ミュンヘナーなど
上面発酵ビール
20℃前後の高温で発酵させるビール。
発酵している間に酵母が浮き上がってきます。
例:ヴァイスビア、ケルシュ、アルトなど
各種ビールの特徴と、ぴったりのジョッキを紹介します
ドイツの家庭においても、各種ビールそのおいしさを引き出すため、種類ごとに選んだジョッキに注ぐのが一般的なのです。
前者4種類は下面発酵、後者3種類は上面発酵です。
ピルスナー(Pilsner)
ドイツ全域で飲まれ、売り上げの65%を占める人気の種類です。
爽やかで繊細な味わいを逃さないよう、飲み口が細身のフルートグラスで。
ミュンヘナー(Münchner)
麦芽のコクがしっかりと感じられる、ドイツ南部とミュンヘンで飲めるビールです。
19世紀に製造された当時は黒に近い色をしていましたが、今は明るい色をしています。
麦芽のコクと香りを楽しむために、口元の開いたラガーグラスで。
シュヴァルツ
1543年には既に製造されており、コクのある香ばしい味わいながら、シャープですっきりした飲み心地です。
のどごしと麦芽の香りを楽しむために、口元の開いたラガーグラスで。
ヘレス(Helles)
ピルスナーよりも苦みが弱く、麦芽の甘みや旨みを感じられます。
麦の香ばしさを一層引き出し、苦みをまろやかにする直線的なジョッキで、勢いよく喉のに流し込んで楽しみます。
ジョッキは勢いよく乾杯をしても壊れないので、お祭りでも良く使われますね。
ヴァイス(Weiße)
ビール醸造には大麦を原料とするのが一般的ですが、こちらは白い小麦を使うのが特徴です。
小麦の酸味と独特な香りの効いた、バナナやバニラの香りを思わせる、フルーティなビール。
酵母を濾過しない製法のため白く濁っており、よりナチュラルな味わいです。
色も琥珀色や濃い黄色がありますが、どちらも滑らかな泡立ちがあります。
その豊かな香りと泡を楽しめるよう、グラスの底は狭く、飲み口が丸く膨らんだくびれの美しいグラスで。(500ml)
※同じ製法でも、バイエルン地方以外で作られたものはヴァイツェン(Weizen)と呼ばれます。
ケルシュ
淡色麦芽のみを使って作るため、色は明るい黄金色で、華やかな香りが特徴です。
爽やかで軽いのど越しを楽しむため、きゅっと飲み干せるサイズのグラスでいただきます。
「棒、竿」という意味のシュタンゲ(Stange)と呼ばれる200mlの直線的な細いグラスに注ぎ、何度もお代わりをして楽しむのですよ。(そのため、椀子ビールとも)
アルト
伝統の製法で、濃色大麦麦芽のみを使用し、色は暗い茶褐色です。
ホップの香りと深い味が特徴的な味わい。
こちらも200mlながら、ケルシュよりも少し太めの安定感あるグラスで。
ドイツの有名ビールメーカーは?
それでは、ドイツの誇る人気メーカーと、代表的なビールの銘柄と特徴をご紹介しましょう!
- ベックス(Beck’s):【ピルスナー】麦芽とホップのバランスが良く、輸出量No.!で、世界中で楽しまれています。
- シュパーテン(Spaten):【シュパーテン・ミュンヘナー・ヘル】600年以上の歴史ある老舗ビール醸造メーカー。苦みは控えめ、ホップの香りの芳醇な、ライトなビール。
- アンデックス(Andechs):【アンデックス・ヴァイツ・ヘル】1455年創業の醸造所。森鴎外も愛した、酵母の残された濁りがコクとなり、飲みごたえがありながらもフルーティで瑞々しい甘さを感じるビールです。
- ビットブルガー(Butbyrger):【ビットブルガー・ブレミアムピルス】1817年創業で、最高級の原料にこだわっています。微かに感じる黒コショウのスパイシーな香りがアクセント。
- ヴェルテンブルガー(Weltenburger):【ヴェルテンブルガー・バロック・デュンケル】世界最古の修道院醸造所。苦みが強くボディのしっかりした、深い味わい。
- エルディンガー(Erdinger):【エルディンガー・デュンケル】1935年創業、バイエルンを代表する醸造所。苦みは少なくクリーミーで、甘みと小麦の微かな酸味が特徴です。
- パラウナー(Paulaner):【パラウナー・ヘーフェ・ヴァイス】1634年創業で、パラウナー修道院の製法を継承。ヴァイスビールで世界一と言われています。柑橘系のさっぱりとした甘い香りが飲みやすいビール。
- ケストリッツァー(Köstritzer):【シュヴァルツ】1543年創業の醸造所。さっぱりしていながらも、ローストした大麦麦芽による、ビターチョコレートのような味わいのビール。ゲーテが愛飲したことで有名です。
- ドム(Dom):【ドム・ケルシュ】ケルン大聖堂のラベルが嬉しい、フルーティーで軽い飲み心地のビールです。
- ハンネン(Hannen):【ハンネン・アルト】1725年創業の醸造所。香ばしい香りとコクがあり、まろやかな舌触りが特徴です。後味も濃厚で飲みごたえがあり、肉料理とも合います。食後酒にも。
イェヴァー(Jever):【イェヴァー・ピルスナー】しっかりした苦みと爽やかな飲み心地。これぞピルスナー!と感じられます。
ここに挙げたのは、ドイツの有名ビールのほんの一部分にすぎません。
ドイツでは年間一人当たり100リットル以上のビールが消費されており、水が140リットルですので、水のようにビールを飲んでいるとも言えます。
現地のレストランでも、水やジュースよりもビールの方が値段が安いのですよ!
面白いことに、日本のようにキンキンに冷やさず、8℃前後でいただくのがドイツ流。
実はその方が、コクと旨みを一番味わえるのです。
皆さんも是非、驚くほど味わいの異なるドイツの地ビールを、8℃前後で味わってみてください!
きっとその芳醇な香りに、やみつきになってしまうことでしょう。