
イギリスを舞台としたハリーポッターでは、何度も登場するミンスパイ!
そう、イギリスの伝統的なクリスマス菓子といえば、ミンスパイとクリスマスプディングなのです。
小説「アズカバンの囚人」では、クリスマスにウィズリーおばさんからハリーに、手作りミンスパイが1ダース贈られましたね!
両親を亡くしたハリーが、おいしそうに頬張る嬉しそうな表情が、目に浮かぶようでした。
さてここで、なぜミンスパイが1ダース(12個)入りだったのか、実は伝統の理由があるのです!
ここではミンスパイの歴史やレシピなどについて解説していきましょう。
ミンスパイの歴史
ミンスパイ(mince pie)は、パイ生地の中に甘酸っぱいドライフルーツやスパイスでできた「ミンスミート(mincemeat)」が詰め込まれています。
ミンスとはミンチの語源であり、「ひき肉」のこと。
その名の通り、昔は肉とドライフルーツ、スパイスの入ったパイだったのです!
では歴史を見てみましょう。
13世紀に十字軍が中東遠征から引きあげてきた時、中東のレシピである果物やスパイス、肉を使ったレシピを持ち帰りました。
そこには宗教的意味が含まれ、キリスト誕生の際に東方から三人の賢者が訪れ、捧げた贈り物が没薬であり、ミンスパイの起源とも言われているのです。
当時はパイ生地やクッキー生地の中に細切り肉、脂身、ドライフルーツ、ナツメグ、シナモン、クローブなどが詰められ、キリストのゆりかごを象った楕円形をしていました。
さらに上表面には切り込みを入れ、キリストを表わす小さな像を入れて焼いていたのです。
当時貴重だった砂糖や卵、ワインも加えられたこの食料は、冬に保存の効く料理として作られ、クリスマスに大切に食べられていました。
しかし1641年の清教徒革命で偶像崇拝にあたるとされてミンスパイの製造が禁止され、その後すぐに禁止令は解かれたものの、徐々に宗教性が失われていきました。
時代を経てひき肉の分量が減っていき、名前は「ミンス」のままでありながら、中には引き肉が入っていないお菓子として残っていったのです。
また、イギリスが世界各地に植民地を持っていたことから、様々なナッツが入手できたため、ミンスパイにも加えられるようになりました。
イギリスでは、チャールズ・ディケンズの書いたイギリスの傑作作品である「クリスマス・キャロル」とミンスパイが、クリスマスには欠かせないものなのです。
ディズニー映画の「クリスマス・キャロル」を観ながら、ゆっくりミンスパイを味わってみてはいかがでしょうか。
食べ方
「ハリーポッター」や「ブリジット・ジョーンズの日記」、「天空の城ラピュタ」でも、ミンスミートは出てきます!
イギリスのクリスマスに欠かせないミンスミートの伝統の食べ方をご存知でしょうか。
ヨーロッパのクリスマスは、12月8日から1月6日までとされていますね。
クリスマスを待つ4週間をアドベント期間といい、アドベントカレンダーを一つずつ開いていったり、ドイツではシュトレンを少しずつ食べていくのでしたね。
しかしここで、12月25日のからクリスマス最後の1月6日までの12夜に1個ずつ食べるのが、ミンスパイなのです。
そのため、ハリーには12個のミンスパイが送られたのですね。
この期間に12個のミンスパイを食べると、新しい年に幸運が訪れると言われているのですよ。
寒い冬にほっこりおいしい濃厚なミンスパイは、イギリスの人々の心と体を温めたことでしょう。
濃厚なだけに、小さなサイズでも満足感があります。
イギリス人の家庭では、暖炉のそばや煙突の下にサンタさんのためのミンスパイと飲み物を置いて多く風習もあるということです。
同じように、この時期に訪れたお客様には、ミンスパイをご馳走するのです。
保存食だけあって、何か月も長持ちしするため、多めに作って春のイースター(復活祭)にも食べることができるのですよ。
ハリーポッターも大好きなミンスパイのレシピ
本場イギリスの、ミンスパイの作り方をご紹介します!
カップケーキ用のオーブン対応カップやマフィン型など、お手持ちの物で作ってみてくださいね。
生地用
- 無塩バター 225g
- 小麦粉 350g
- 冷たい水 120㏄
- 砂糖 100g
- 塩 1つまみ
- 溶き卵 1個分
ミンスミート用
- ブラウンシュガー 175g
- レーズン 175g
- グリーンレーズン 125g
- ドライカシス 125g
- レモンピール 60g
- オレンジピール 60g
- 砕いたヘーゼルナッツ 25g
- オールスパイス 小1/2
- シナモンパウダー 小1
- ナツメグパウダー 小1/2
- りんご(できれば酸味のある青りんご) 225g
- 湯せんして溶かした無塩バター 125g
- ブランデーまたはウイスキー 大3
<作り方>
- まずはミンスミートを作ります。ボウルの中にブラウンシュガー、全てのドライフルーツ5種類、ヘーゼルナッツ、全てのスパイス3種類を入れて混ぜる
- 1にりんごをすりおろして入れ、溶かしたバターとブランデー(またはウイスキー)を加えて混ぜる
- ボウルの上に布をかけ、常温で二日間以上寝かす(伝統的には3週間)
- ミンスミートができあがったら、パイ生地を作ります。冷蔵庫から出したばかりの固いバターをサイコロ型に切る
- ボウルの中にバターと小麦粉をふるい、カードでバターを細かくなるまで切りながら混ぜ、パラパラにする
- 生地の真ん中に穴を作り、そこへ冷水、溶き卵、砂糖、塩を入れてなめらかになるまで混ぜ、生地をひとまとめにし、1時間冷蔵庫で寝かす
- 平らな場所に小麦粉をふるい、くっつかないようにしてから生地を麺棒で伸ばし、5㎜の厚さに伸ばす
- カップ型の底と壁面に生地がくるような大きさに12個くり抜く
- 余った生地からカップ型の口と同じサイズの星型を12個くり抜く
- カップ型の内側にバターを塗る
- カップ型の中に生地を敷き、ミンスミートを12等分ずつ詰める
- 生地の上に星形の生地を乗せる
- 200度で予熱したオーブンで15分焼く
- オーブンから取り出し、室温で冷まして出来上がり!お好みで粉砂糖をふりかけても可愛いですね。
ミンスパイは覚めていても美味しいですが、食べる前にオーブンで温め直すと、より香ばしく甘い香りが広がっておいしくなります。
上表面の生地を一旦剥がし、ホイップクリームを乗せて生地を戻して食べるのも一般的です。
型に生地とミンスミートを詰めた状態で冷凍庫で保存しておき、クリスマス当日に焼くというのもOKです。
イギリスらしく、ぜひ紅茶と一緒に味わってくださいね!