
イタリアの有名なお祭りの一つに、「オレンジ合戦(battaglia delle arance)」があります。
北イタリアのピエモンテ州にある、イブレア(Ivrea)にて毎年2月頃に開催されます。
スペインでトマトを投げ合うお祭りがあるように、イタリアではオレンジを全力で投げ合うお祭りがあるのです!
その様子はもう、迫力満点!中世時代の戦争を見ているようです。
是非一度オレンジ合戦を見に行っていただくためにも、その由来やルール、開催日やアクセスなどをご紹介していきますね。
オレンジ合戦の歴史的由来
イブレアのオレンジ合戦は、カーニバルの最後の日曜~火曜の三日間に行われるものです。
イブレア市民が貴族チームと平民チームに分かれ、オレンジを投げ合って優位を争うお祭り。
オレンジは北イタリアでは生産されていないため、わざわざシチリアから400トンものオレンジを運んでくるのです!
しかもブラッドオレンジ!
お祭りが始まると、馬車や山車の走る中、剛速球ででオレンジ色の玉が飛び交い、割れたオレンジから飛び散る真っ赤な果汁!!
当たった人たちは、まるで血だらけかのよう。
まさしく中世の戦争絵図です。
大迫力のこの伝統行事は、1808年からほぼ現在の形式として続いています。
後述の現在の9チーム編成の形式は、第二次世界大戦後にできあがりました。
さて、このオレンジ合戦の由来として、いくつかの言い伝えをご紹介しましょう。
悪い領主への一揆
13世紀にこの街を治めていた男爵は、重税や厳しすぎる政治を行い、人々を苦しめていました。
中でも全ての花嫁の初夜権を男爵が握るという取り決めがあり、大変反感をかっていました。
ある時、粉屋の娘ヴィオレッタが結婚することになります。
しかしヴィオレッタは断固として、男爵には屈しないと夫に誓います。
そして結婚した日の夜、決まり通りに城へ上がった彼女はーーー
なんと隠し持っていた短剣で、男爵の首を切り落としたのです!!
城のバルコニーからその首を掲げたヴィオレッタの勇敢な姿を見て、街の人々は歓喜し、雄叫びを挙げながら城を攻撃。
領主を失った城は、あっという間に人々の手に落ちました。
その大規模な一揆で壊された城は、その後再び建て直されることはありませんでした。
その様子が、貴族VS農民のオレンジ合戦という形になって今に残っていると言われています。
現在ヴィオレッタは「La vezzosa Mugnaia(粉屋の美しい娘)」という名で親しまれ、毎年ミス Mugnaiaとして選ばれた女性がパレードで笑顔をふりまいてくれますよ。
悪い領主への反抗
当時の領主は、農民に厳しい政治を行っていました。
農民たちが待遇の改正を求めても聞く耳を持たず、年に2回、鍋いっぱいの豆を施すことでとりなそうとしていました。
ある農民は怒って、施された豆をつかんで領主に投げ返しました。
そうして、中世時代にはカーニバルの時期に豆合戦をするようになりました。
それが、オレンジ合戦の始まりだったと言われています。
では、なぜ豆合戦がオレンジ合戦となったのでしょうか?
豆がオレンジになった理由
1800年頃のカーニバルの時、街をパレードの馬車が練り歩くのを見て、女性は自分の家のバルコニーから花や紙吹雪を撒いていました。
そのパレードに参加している、お気に入りの男性に自分をアピールするため、という理由もありました。
そのため、当時北イタリアでは珍しい果物だったオレンジを投げ、自分を目立たせようとする女性も出てきたのです。
すると少しずつ、カーニバルのパレード側からも、気持ちのお返しやいたずらとして、オレンジを投げ返すようになりました。
それが、オレンジ合戦となって残っているとも言われているのです。
オレンジ合戦のルール
それでは、どのようなルールでお祭りが執り行われているのか、ご紹介しましょう。
まず、馬車に乗っている人たちは貴族の役で、50以上の馬車を出し、1000人以上で編成されています。
中世時代の貴族は馬車に乗って甲冑を着ていたため、貴族チームの人々は同じく馬車の上でヘルメットをかぶって参戦します。
その周りを歩いているのは平民役で、4000人以上で9チームを構成しています。
中世時代の平民らしく、甲冑はつけていませんが多勢です。
400トンものブラッドオレンジの入った木箱が、山のように積み上げられています。
時々、それをつまみ食いしているおじさんもいます(笑)
試合前に、絞ったオレンジジュースで顔を洗って気合を入れる人も!
白熱の戦争が幕を上げると、両チーム一斉に、ものすごい勢いで固いオレンジを投げ始めます!
審判もおり、このすさまじい合戦を観察し、かわし方が上手、攻撃が上手…などで点数をつけ、両チームでそれぞれ一番優れていたチームが勝ちとなります。
ちなみに、このチームに参加するには、地元の住民でなければなりません。
観光客たちは転がって来たオレンジを掴んで、どさくさ紛れに投げつけることもできますが、オレンジ打撲にくれぐれもご注意を!
戦争に参加していないアピールのためには、会場に入る時にもらえる赤い帽子、フリジア帽(Berretto Frigio)をかぶりましょう。
カルツァ(Calza)という大きな靴下の形をした赤い帽子もあり、会場内で5ユーロ程で売っています。
しかし赤い帽子をかぶっていても、油断はできません!流れ弾には要注意です。
イベントを見に来た人を守るために、建物沿いに金属製のネットを張っていますが、それを突き破ってオレンジが飛び込んでくることもありますので、お気をつけくださいね。
お祭りの終わった後は、あたり一面オレンジの海!
この潰れたオレンジや残ったオレンジは、家畜の餌になるのだそうです。
9つの平民側のチーム名
あなたはどのチームを応援しますか?
ユニフォームもそれぞれ決まっていて、見分けがつきやすくなっているのですよ。
- Picche(スペード)
- Morte(死)
- Tuchini(トゥキーニ)
- Scacchi(チェス)
- Arduini(アルドゥイーニ)
- Pantere(パンサーズ)
- Diavoli(悪魔)
- Mercenari(傭兵)
- Credendari(クレデンダリ)
ところでオレンジ祭りと似た名前の「レモン祭り」があるのをご存知でしょうか?
オレンジ合戦と対照的に平和なお祭りで、癒されますよ(笑)
開催日とアクセス
上でご紹介したように、オレンジ合戦はカーニバルの時期の最後の日曜~火曜の三日間で行われます。
カーニバル(イタリア語ではカルネヴァーレ)は謝肉祭のことで、カトリックの国々の伝統的な行事です。
毎年異なる日付けのイースター(復活祭)の前に、肉を避けるクアレシマという40日間の期間があります。
謝肉祭はクアレシマの直前にご馳走を食べ、大騒ぎをするものだったのです。
オレンジ合戦2月26日(日)~28日(火)
時間は14時頃から!
くれぐれも、汚れても良い格好で出向いてくださいね。
ピエモンテ州イブレア(Ivrea)へのアクセス
トリノからトリノ(Torino)ーアオスタ(Aosta)ライン(電車)で1時間~1時間半
トリノの駅:トリノ・ポルタ(Torino Porta)、トリノ・ポルタ・スサ(Torino Porta Susa)
いかがでしたか?
中世時代から続く、熱い伝統行事を見てみたくなったのではないでしょうか。
勇気ある方、是非いくつかオレンジを投げ、参戦してみてくださいね!