
パリで毎年10月下旬から開催される、チョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」!
あと一週間で始まるこの祭典の詳細を、ご紹介します。
グルメなスイーツファンの方々は、今年もこのイベントに参加するべく、予定を組んでおられるのではないでしょうか。
この祭典では、世界中から集まるショコラティエやパティシエが、ここでしか出会えないような珍しいチョコレートを試食させてくれます。
しかも、このイベントは年が明けてから日本各地にやってくるのです…!(2013年から毎年日本でも開催されています。)
ヨーロッパの美しく高級なチョコレート、是非食べてみたいですよね。
でも、チョコレートの原料であるカカオ豆は、南アメリカ原産ですよね…?
「サロン・デュ・ショコラ」をより楽しむためにも、まずはチョコレートの歴史からお話ししましょう!
知っておくべき、チョコレートの歴史
チョコレートの元になった食べ物は、紀元前2000年頃、メソアメリカ(現在のメキシコ南部、中央アメリカ)で生まれました。
メソアメリカにはマヤ文明やアステカ王国など、アメリカ先住民族が高度な文明を築いていた地域です。
その頃は、カカオの果実を発酵させ、取り出した種(カカオ豆)をすりつぶして水やお湯に溶かしていました。
そこへバニラや唐辛子などのスパイスを混ぜ、薬用や強壮用として飲んでいたのです。
当時からカカオは珍重されており、貨幣としても扱われていたほど。
それがどのようにしてヨーロッパに伝わったのでしょうか?
カカオのヨーロッパ伝来
カカオを初めてヨーロッパに伝えたのは、なんとイタリア人航海士のコロンブスです!
コロンブスはスペイン国王の援助を受け、新大陸であるアメリカ大陸を発見し(インドだと思い込んではいましたが)、1502年に初めてカカオをスペインに持ち帰ったのです。
けれどもコロンブスは、マヤ族がカカオの実を大切にしているので持ち帰っただけで、使い道を理解してはいませんでした。
その後1544年、マヤ族がスペイン皇太子を訪問した際に、カカオは飲料として宮廷に運ばれ、そのおいしさにスペイン中の王侯貴族たちが虜になったのです。
そして、当時の強い苦みをまろやかにするために砂糖や牛乳、コショウやシナモンなどが加えられ、飲みやすいものに変わっていきました。
スペイン語では「チョコラテ(chocolate)」。(英語のつづりは今と同じですね。)
それでもまだ、チョコレート飲料の普及はヨーロッパではスペインと、スペインに併合されたポルトガル、オランダのみでした。
スペインからフランスへ伝わったチョコレート
1615年にスペイン王女アナ・マリア・マウリシアがフランス王ルイ13世に嫁いだ時、チョコレートがフランスに伝わったと言われています。
更にその息子であるルイ14世も、1661年にスペイン王女マリア・テレサを妻に迎えました。
その時、マリア・テレサはチョコレートを飲む道具一式と、優秀なチョコレート職人と一緒にフランス王宮に嫁いだのです。
チョコレートは嗜好品としてだけではなく薬としても扱われており、王室薬剤師がチョコレート職人でもありました。
ルイ15世も自分でチョコレートを準備するほどチョコレート好きでしたし、ルイ16世の妻であるマリー・アントワネットも無類のチョコレート好きだと伝えられていますね。
砂糖のたっぷり入った高価なチョコレートは、王侯貴族だけのもの。
チョコレート液にオレンジフラワーや甘いアーモンドを加えるなど、贅を尽くしたアレンジがされていました。
その後17世紀後半にはフランスの市民層にもチョコレートが普及し、世界へと伝わっていきました。
19世紀にはポルトガル、イギリス、スペイン、ベルギーなどが植民地にカカオの木を育て、チョコレート産業を興していきました。
飲料から固形の食べるチョコレートになったのは?
長い間、チョコレートは飲み物でしたが、19世紀の産業革命により、新技術により固形のチョコレートが発明されました。
どのように革新が進んだか、順番に見てみましょう。
- 1828年にオランダのコンラッド・ヨハネス・バン・ホーテンが、カカオを圧縮してココアパウダーとココアバターを分離する方法を発明。さらに、カカオにアルカリ処理を行うことで、苦味を和らげる方法も考案。
- 1847年にイギリスでジョセフ・フライが、固形チョコレートを発明。
- 1875年にスイスの薬剤師であるアンリ・ネスレと、チョコレート職人のダニエル・ペーターが、ミルクチョコレートを開発。
- 1879年にはスイスのロドルフ・リンツの新技術により、ざらついていた固形チョコレートが、滑らかな口当たりに変化。
上記四つの大発明は、「チョコレートの4大技術革命」と呼ばれています。
これが、現在のチョコレートの元になりました。
チョコレートの有名なヨーロッパの国と、ブランド名は?
世界中で愛されるチョコレートですが、国によって様々な特徴があります。
ここでは特に有名なチョコレートの国と、有名ブランドをご紹介しましょう。
フランス
スペインから伝わったチョコレートを王宮付きの薬剤師がアレンジしていました。
飲み物として、また、マリー・アントワネットの苦い薬を包む方法としても活用したのです。
美食の国フランスらしく、見た目にも美しいボンボン・オ・ショコラ(一口サイズのチョコレート)が主流です。
洋酒やナッツ、クリームを贅沢に使うのも、宮廷から続く歴史があるからこそ。
チョコレート専門店も多く、宝石のような美しさに胸が躍ることでしょう。
【有名なブランド】
- ラ・メゾン・デュ・ショコラ(La Maison du Chocolat)
- ピエール・エルメ(Pierre Hermé)
- ダロワイヨ(Dalloyau)
- パトリック・ロジェ(Patrick Roger)
- クリストフ ルッセル(Christophe Roussel)
- マルキーズ・ド・セヴィニエ(Marquise de Sévigné)
- ミッシェル・クルイゼル・ショコラ(Michel Cluizel Chocolates)
- プラリュ(Pralus)
- リシャール(Richart)
- ヴァローナ(Valrhona)
ベルギー
ベルギーは17世紀にスペインの支配下にあったため、チョコレートの文化も伝わりました。
その後19世紀には、ベルギー国王がコンゴを植民地化し、カカオ栽培を開始した歴史があります。
20世紀後半に、チョコレートの中にナッツクリームなどを詰め込んだプラリネが、ベルギーで誕生しました。
さすがプラリネの発祥の地!
貝殻、ハート、花、ダイヤモンド型など様々な形のプラリネがあり、それぞれで味が異なるのです。
中身のバライエティは驚くほど豊かで、ダークチョコレートの中にベルガモットやサフランのクリームだったり、ビターチョコレートに金柑など、味わいの楽しいものばかりです。
【有名ブランド】
- ゴディバ(Godiva)
- ノイハウス(Neuhaus)
- ギリアン(Guylian)
- ピエール・マルコリーニ(Pierremarcolini)
- デルレイ(Delrey)
- レオニダス(Leonidas)
- ガレー(Galler)
- ヴィタメール(Wittamer)
- コートドール(Coted’OR)
イタリア
エスプレッソコーヒーが大好きなイタリアでは、チョコレートも味や香りが香ばしいものが好まれます。
エスプレッソと一緒にチョコレートが出されることもあり、コーヒーに負けない深い香りが求められ、カカオ豆は深炒りです。
ヘーゼルナッツなど、地元のナッツ類をふんだんに使ったものが多いです。
甘くて口どけが良いのが特徴。
ナッツの香ばしさがコーヒーに良く合い、大粒なため、男性にも人気です。
【有名ブランド】
- バビ(Babbi)
- コヴァ(Cova)
- カファレル(Caffarel)
- アメデイ(Amedei)
- バラッティ(Baratti)
- フェレロ(Ferrero)
- ギラデッリ(Ghirardelli)
- グイド・ゴビーノ(Guido Gobino)
- ペルジーナ(Perugina)
スイス
甘いミルクチョコレート発祥の地。
広大な牧草地で育てられた乳牛の、栄養たっぷりのミルクを用いており、コクとなめらかさが特徴です。
ミルクチョコレートはコクがあって美味。
シンプルなパッケージが清々しい印象で、男性にも人気です。
【有名ブランド】
- リンツ&シュプルングリー(Lindt & Sprüngli)
- ブロンデル(Blondel)
- トイスチャー(Teuscher)
- ネスレコンフェクショナリー(Nestle’Confectionery)
- カイエ(Cailler)
- ファバラジー(Favarger)
- フライ(Frey)
- レダラッハ(Läderach)
- スシャール(Suchard)
- トブラローネ(Toblerone)
イギリス
世界で初めて、チョコレートの作り方を発明したイギリス。
紅茶に合うよう、紅茶の繊細な香りの邪魔にならないものや、紅茶のおいしさを更に引き立てる香りのものが好まれます。
板チョコレートが主流です。
スミレやバラなど花のエッセンスを加えたものなど、様々なフレーバータイプがあり、女性に大変人気!
ミントチョコもイギリス発祥です。
伝統のブリティッシュスタイルを重んじる国らしく、重厚な味わいがあります。
【有名ブランド】
- キャドバリー(Cadbury)
- グリーン&ブラックス(Green & Black’s)
- プレスタ(Prestat)
スペイン
ヨーロッパで一番最初にチョコレートがもたらされた国だけあって、アメリカ大陸から伝わったチョコレートの原型を少しとどめています。
カカオが多く含まれ、砂糖は少なめ。
各地方の果物やナッツ類を用いたチョコレートが多いです。
【有名なブランド】
- カカオサンパカ(Cacao Sampaka)
- オリオールバラゲ(Oriolbalaguer)
オーストリア
ハプスブルク家の影響が色濃い、濃厚な高級チョコレートが有名です。
こってりと濃厚な味わいのチョコレートケーキ(ザッハトルテ)が有名ですが、チョコレートも深い味わいです。
お酒を効かせたこってりした味や、甘いジャムが入ったものが主流です。
包装の美しいデザインも魅力の一つです。
【有名ブランド】
- デメル(Demel)
ぞの他にも、ドイツのコペヌール(Coppeneur)やヴィヴァーニ(Vivani)、ルクセンブルクのジェナヴェ(Génaveh)もとても有名です。
世界一のチョコレートの祭典【サロン・デュ・ショコラ】2017年パリでの開催は?
ご説明したように、ヨーロッパのチョコレートは、スペインやオーストリア、フランスの宮廷生活で愛されてきた歴史を、今に受け継いでいます。
そして各国の王家御用達のチョコレートや、老舗のチョコレートたちが勢揃いするのが、年に一度パリで開催される「サロン・デュ・ショコラ」なのです。
この世界一のチョコレートの祭典に、世界中から名立たるショコラティエたちが集まり、宝石のようなチョコレートを紹介してくれます。
チョコレートの販売や試食だけではなく、チョコレートのレシピやデモンストレーション、チョコレート細工の展示など、毎日楽しいイベントが盛りだくさん!
今年のサロン・デュ・ショコラ
2016年10月28日(金)~11月1日(火)
パリのポルト・ドゥ・ヴェルサイユ(Porte de Versailles)にて開催されます。
1995年から毎年開催されており、今年は第22回目。
開場ブースの総面積はなんと2万㎡で、5日間で12万人もの人が訪れます。
10月27日に前夜祭があり、入場チケットは一人35ユーロで購入できます。
19時~オープニング
20時~チョコレートファッションショー(チョコレートならではのハプニングやサプライズが、いっぱいつまっています!)
そう、このチョコレートファッションショーがとっても素敵なんです!
モデルさん達が身に纏う美しいドレスが、チョコレートでできているのです。
まさかこのドレープがチョコレートだとは…と驚くと共に、観客たちは甘い香りに包まれ幸せな気持ちに!
【ライブパフォーマンス】
有名なグループであるチルコメディエ・ムシカーレ(Circomedie Musicale)によるティメオ(Timéo)の公演があります。
指揮者はAlex Goude。
【チョコレートアート】
毎年会場を飾る、大注目のチョコレートアート。
今年は、パリの小さなアトリエ、ル・ショコラ・デ・フランセ(le Chocolat des Français)のショコラティエ、Richard Orlinski氏が、巨大ゴリラを担当!
そして、ベルギーのチョコレートブランド「レオニダス(Leonidas)」は、チョコレートのエッフェル塔を担当することになっています。
ニューヨークタワーによじ登るキングコングを思い浮かべますが、さぁ、どんな仕上がりになるのでしょうか、楽しみですね。
見どころいっぱい、体験いっぱいの5日間ですが、なんとこの祭典は日本にも毎年やってくるのです!
一流のショコラティエの芸術にまで高められたチョコレートたちを、是非お手にとってみてください。
これまで2013年から2016年まで、毎年1月の終わりから2月14日まで開催されています。
まだ未発表ではありますが、2017年も1月終わりから開催されることでしょう!
長い歴史をもったチョコレートの魅力と、サロン・デュ・ショコラのわくわくが伝わりましたでしょうか?
是非、本場パリでの祭典にも参加してみてくださいね。