
美しくも儚い愛と葛藤を描いた、不朽の名作【オペラ座の怪人】をご存知でしょうか。
フランス・パリのオペラ座(ガルニエ宮)を舞台とした物語は、全世界で熱狂的に愛されています。
1988年に日本で初演されてから、そのドラマティックなストーリーと美しい音楽、そして豪華な舞台や衣装などが大人気となり、そう公演回数は66600回以上!
そんな【オペラ座の怪人】が劇団四季によって初めて、横浜・KAAT神奈川芸術劇場ホールで上演されることになりました!
開幕は2017年3月25日(土)!
ここでは、観劇をもっと楽しむために、事前準備として必要な原作やあらすじ、歌など見どころを解説していきます。
オペラ座の怪人の原作
1909年、フランスの作家「ガストン・ルルー」によって発表された小説が原作です。
日刊紙に約4か月に渡って連載された、人気の物語は翌年1910年に出版されます。
ルルーは実際にオペラ座(ガルニエ宮)の構造や地下にある地底湖、建築設計について詳しく取材していました。
そこでまことしやかに噂される幽霊話や、歌手の行方不明事件など、実際にあった恐ろしい事件の情報を得ます。
中でも最もフォーカスされたのが、1896年に起こったシャンデリア落下による観客の死亡事故でした。
ルルーはそれらに着想し、ミステリアスな怪奇ロマンを執筆したのです。
この物語を原作として、多くの映画やミュージカル作品が作られており、作り手によって少しずつ設定やラストが違っています。
最も有名な映画やミュージカルは以下のものでしょう。
- 1925年の映画:ルバート・ジュリアン監督、ロン・チェイニー主演
- 1986年のミュージカル:アンドルー・ロイド・ウェバー作
ルバート・ジュリアン監督の作品は、ほぼ原作に忠実であり、オペラ座の怪人の猟奇的で一方的な愛憎を描いているのが特徴です。
作曲家であるアンドルー・ロイド・ウェバーによる作品は、オペラ座の怪人とヒロイン、そしてその婚約者が三角関係となり、ヒロインが二人に抱く別の形の愛を描いているのが特徴です。
そしてまた、代々音楽家の家系であるロイド・ウェバーによるドラマティックな音楽も、このミュージカルを不朽の名作としているのです。
このロイド・ウェバー版が、劇団四季の脚本となっているのですよ。
心揺さぶられる曲
「オペラ座の怪人」といえば「サラ・ブライトマン」を思い起こす方も多いのではないでしょうか。
何を隠そう、彼女はロイド・ウェバーの当時の妻だったのです!(現在は離婚)
作曲家であるロイドは、当時はミュージカル俳優としては無名だった妻サラ・ブライトマンをヒロイン役であるクリスティーヌに抜擢しました。
ニューヨークブロードウェイの俳優協会からの反対を押し切って、彼女の音域に合わせて曲を作り、脚本も作ったのです。
サラの声域は3オクターブに及び最高音はf6にまで達します。
彼女のその豊かで透き通った、時に悲痛な叫びのような表情をも見せる歌声は、ロイドの書いた曲を完璧に世に響かせ、一躍有名になりました。
それでは、劇中で歌われる有名な曲をご紹介しましょう。
二部構成になっており、新しい試みとして劇中で3作も、オリジナルのオペラ作品が入れ込まれているのです。(「ハンニバル」「イルムート」「ドン・ファンの勝利」)
これを「シアター・イン・シアター(劇中劇)方式」と呼び、新しい舞台装置の開発によって取り入れることが可能となりました。
第一幕
- 劇:ハンニバル
- Think of Me(クリスティーヌ)
- Angel of Music (クリスティーヌ、メグ)
- Little Lotte (クリスティーヌ、ラウル)
- The Mirror (Angel of Music) (ファントム、クリスティーヌ)
- The Phantom of the Opera (ファントム、クリスティーヌ)
- Music of the Night (ファントム)
- I Remember…/Stranger Than You Dreamt It (クリスティーヌ、ファントム)
- Magical Lasso (ブケー、マダム・ジリー)
- 劇:イルムート「Notes…/Prima Donna 」(カルロッタ、ファルマン、アンドレ)
- Why Have You Brought Me Here?/Raoul, I’ve Been There
- All I Ask of You (クリスティーヌ、ラウル)
- All I Ask of You (Reprise) (ファントム)
第二幕
- アントラクト
- Masquerade/Why So Silent…?
- Notes…/Twisted Every Way
- Wishing You Were Somehow Here Again (クリスティーヌ)
- 劇:ドン・ファンの勝利「Wandering Child 」(クリスティーヌ、ファントム)
- The Point of No Return (ファントム、クリスティーヌ)
- Down Once More…/Track Down This Murderer
物語の簡単なあらすじ
- ファントム:オペラ座の怪人(本名エリック)。オペラ座の地下(奈落)に住む天才作曲家・演出家。生まれた時から醜い顔を持ち、白い仮面を被っている
- クリスティーヌ・ダーエ:オペラ座のコーラスガール。有名なバイオリニストを父に持つものの、まだ才能が開花していないところをファントムに見出される
- ラウル・シャニュイ子爵:オペラ座の新しいパトロンで、クリスティーヌの幼馴染として彼女に想いを寄せる
- カロッタ・ジュディチェルリ:オペラ座の輝かしいプリマドンナで、クリスティーヌが成功してから彼女に嫉妬する
- マダム・ジリー:オペラ座のバレエ教師。ファントムの手紙をオペラ座の支配人に渡す役目を担う
- メグ・ジリー:マダム・ジリーの娘で、オペラ座のコーラスガールであり、クリスティーヌの友人
- ジョセフ・ブケー:オペラ座の舞台係
舞台は花の都パリ。
パリが最も繁栄したベル・エポックの1881年の壮絶な愛の物語を描きます。
オペラ座のコーラスガールであるクリスティーヌは才能の芽が出ず、唯一自分を信じてくれた有名バイオリニストの父を亡くし、途方に暮れていました。
そんな時、楽屋で一人きりになると、どこからともなく歌の指導をしてくれる優しい男性の声が聞こえるのです。
クリスティーヌは父が最後に遺した「おまえのために、天国から音楽の天使を遣わすよ」という言葉が現実となったと信じ、素晴らしい才能を持った「音楽の天使」の指導に励みます。
みるみるうちに才能を目覚めさせるクリスティーヌは、友人メグに「音楽の天使」のことを打ち明けます。
ある夜、オペラ座の花であるプリマドンナであるカルロッタがリハーサルをしていると、急に舞台背景が崩壊します。
怯えた出演者は「怪人」の仕業だと囁き合います。
そう、このオペラ座には昔から「オペラ座の怪人」が地下に隠れ住んでおり、まるで影の支配者かのように支配人たちに指示をしていました。
彼の姿を見た者はいませんでしたが、指示の手紙がバレエ教師のマダム・ジリーに届き、その意向に沿わない場合、恐ろしい事件が起こるのです。
恐ろしくなったカルロッタはその夜の出演を拒否し、急きょ代役が必要となりました。
メグは母のマダム・ジリーと共に、クリスティーヌが歌えると推薦します。
白羽の矢が立ったクリスティーヌは、「音楽の天使」の指導で磨かれた素晴らしい歌声を披露し、舞台は大成功となったのです。
彼女の才能を見抜き、自らを「音楽の天使」と名乗って指導をしたのは、他でもない「オペラ座の怪人」でした。
彼は天才的な音楽の才能を持っていましたが、生まれつきの顔の奇形によって皆にいじめられ、母親にも愛されず捨てられた、傷付いた孤独の心と美への執着がありました。
自分を慕う素晴らしい才能を持つ美しいクリスティーヌに、怪人は執着とも呼べる愛を抱き、自分の作った曲を歌わせたいと望むようになったのです。
しかしこの大成功した舞台の観客の中に、クリスティーヌの幼馴染であり、オペラ座の新しいパトロンのラウルがいました。
彼は美しく成長したクリスティーヌを観て感動し、恋の炎が燃え上がります。
クリスティーヌの楽屋に挨拶に行き再会を果たしましたが、彼女は「音楽の天使」に夢中でした。
クリスティーヌは自分を成功へと導いてくれる「音楽の天使」に、姿を見せてほしいと頼みます。
怪人は彼女を喜んで地下の隠れ家へと導きます。
美しい歌声の怪人に魅了され、不気味な地底湖を進むクリスティーヌ。
そして初めて、「音楽の天使」が仮面で顔を隠した怪人だったと知るのです。
彼の素顔を見たかったクリスティーヌは、怪人の背後から仮面を剥ぎ取ります。
すると恐ろしい奇形の素顔が現われ…
驚きを隠せないクリスティーヌでしたが、彼の隠された孤独と、自分への愛を打ち明けられるのです。
オペラ座では、カルロッタを主役とする新しい舞台「イルムート」公演を控えていました。
そこへ、怪人からの手紙が届き「主役をクリスティーヌにしなければ想像もできない酷いことが起こるだろう」と書かれていました。
支配人たちは激怒し、カルロッタ主演のまま公演を始めます。
すると舞台上で急に、カルロッタの声が蛙の泣き声に変わってしまったのです。
そして悪魔の様な笑い声と共に、舞台係ブケーの死体が天井から落下するのです。
自分の意にそわないと簡単に殺人まで犯す怪人に、クリスティーヌは怖くなり、ラウルと共に屋上へ逃げました。
そして地下での怪人との密会と、自分も殺されるかもしれないという不安をラウルに打ち明けます。
ラウルは彼女への愛を近い、クリスティーヌは彼との婚約を受け入れます。
二人の幸せな時間…と思われますが、実はこの様子を怪人は隠れて聞いていたのです。
悲しみと怒りに狂った怪人はラウルに復習することを心に誓い、幕が下りると同時にオペラ座の巨大なシャンデリアが落下する事件が起こりました。
その半年後、仮面舞踏会(マスカレード)にレッド・デスの衣装に身を包んだ怪人が現われ、オペラ「ドンファンの勝利」を作曲したことを発表します。
その舞台にはクリスティーヌを主演とするよう要求し、反した場合は悲惨な結末が待っていると警告します。
そしてクリスティーヌの婚約指輪を奪い、姿を消します。
ラウルはこの機会に怪人を捕えるため、あえてクリスティーヌを出演させることを決めます。
囮の役目を強いられるクリスティーヌは、ラウルへの愛と、自分を育ててくれた孤独な怪人への想いの間で揺れ動きます。
苦しむクリスティーヌは愛する父の墓の前でどうしたら良いか問いかけます。
するとそこへ、あの優しい「音楽の天使」としての怪人が現われ、クリスティーヌを優しく懐柔しようとします。
そこへラウルが登場し、クリスティーヌは我に返り「助けて!」と叫ぶのです。
怪人はその言葉にクリスティーヌの本当の心を知り、怒り狂って墓地に火を放ちます。
予定通り「ドンファンの勝利」はクリスティーヌ主演とし、パートナーのテナー歌手と共に開幕しました。
しかしデュエットの際、クリスティーヌはパートナーが怪人であることに気付きます。
本当のテナー歌手は、舞台裏で怪人によって殺されていたのです。
怪人が愛の言葉と共にクリスティーヌに指輪を渡した時、クリスティーヌは怪人の仮面を剥ぎ取り、恐ろしい素顔を皆の前に見せました。
怯える観客たちを前に、怪人はクリスティーヌをさらって隠れ家へと消えます。
ラウルは二人を追って地下へと急ぎますが、怪人の投げ縄に捕まってしまいます。
怪人はクリスティーヌに、自分を選ぶか、ラウルの命を選ぶかと迫るのです。
クリスティーヌは孤独のためにここまでしてしまう怪人を哀れに思い、醜いのは顔ではなく魂だと諭します。
そして怪人を包み、キスをしたのです。
怪人は生まれて初めての愛に触れ、本当の愛の美しさ、素晴らしさに気付きます。
彼はこれまでの行動を詫び、クリスティーヌとラウルを解放します。
そして最後にもう一度、怪人はクリスティーヌへの深い愛を伝え、二人を見送ります。
涙を流しながら怪人を後にするクリスティーヌ。
そして、怪人は一人涙を流しながら、ソファにうずくまりマントで身を隠します。
そこへ押し寄せる、怪人を捕えようとする人々…
メグがソファのマントをはがすと、そこには仮面だけが残されていました。
ーーおしまいーー
鳥肌の立つようなドラマティックな愛憎の物語。
怪人の孤独な悲しみや、最後には本当の愛に目覚め、愛ゆえに二人を解放する場面は涙を誘います。
どうぞ劇中の豪華な演出を、実際に楽しんでみてくださいね。
何度観ても感動する素晴らしい作品ですよ。